天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
敵は、あたし
「ロバートさん…」

意識を失っているロバートを抱きかかえようにした瞬間、僕は背中から鋭い殺気を感じた。この世界、気を研ぎ澄ませてないと、いつ殺されるかわからない。

とっさに、ロバートを抱えながら、右横にジャンプした。 

しかし、その行動を読んでいたように、回し蹴りが僕の軌道を追う。

「チッ」

僕の意識を感じて、ファイアクロウが両手から飛び出し、蹴りを受けとめた。

そして、チェンジ・ザ・ハートが左右から、敵を攻撃した。

「な」

僕は絶句した。

チェンジ・ザ・ハートは、敵を攻撃するのではなく、敵の両手におさまると、合体して…槍の形になった。

そして、槍を脇に挟むと、僕に向かって構えた。

その姿は、何度もピアスの中から見た…構え。

「め、女神の一撃!?」

信じられない技…そして、信じられない姿。

そこにいるのは、アルテミアその人だった。

軽いパニックになる僕に、喝を入れるように、ピアスの中のアルテミアが叫んだ。

「ぼさっとするな!死にたくなかったら、あいつの懐に飛び込め!」

「え!」

「槍を振るう前に、その爪で、チェンジ・ザ・ハートを止めろ!そいつなら、止められる」

考えてる暇はない。アルテミアを信じ、その言葉に従うだけだ。

初動であるかまいたちが、ひどくなる前に、僕は懐に飛び込んだ。

魔力が風となり、僕の肌を切り裂いたが…まだ大丈夫だ。

振るう前のチェンジ・ザ・ハートを、ファイアクロウで引っかけて押さえ付けた。

「ありったけの力を込めろ!」

「うわあああああっ!」 

チェンジ・ザ・ハートから漏れる雷鳴と、僕から注がれる炎が、接触面でぶつかり合う。

「今だ!赤星!」

「モード・チェンジ!」

僕の体は、光に包まれた。
< 301 / 1,566 >

この作品をシェア

pagetop