天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
赤星に背を向けて、校舎を曲がっても、しばらくは気を抜かずに、守口舞子は早足で、歩き続けた。

(追ってこない)

少し安堵感を覚えながらも、舞子は足を止めなかった。

(赤星が…うわさ通りのレベルなら、あたしでは勝てない)

舞子は、ブレザーのポケットから、数枚のカードを取り出した。

「やっぱり、クズに渡しても、クズね」

舞子が持っているカードは、赤星が持っているカードとは、少し違った。

見た目はわからないが、魔物を倒し、ポイントが増えていくカードではなく、ある程度のポイントが最初、他からわけられ、それがなくなるまで使える。ポイントをすべて消費すれば、カードは使えなくなる。

このカードは、ブルーワールドでは、ポイントを集めることのできない子供に、護身用に渡すことが、多かった。

「折角、あの方から頂いたもの…。有意義に使わないと」

舞子は、歩くスピードを上げた。

舞子が、壁に沿って歩く校舎の上、屋上の周りを囲む金網にもたれ、西園寺は苦笑した。 

「この世界は、ぬるま湯だ」

西園寺は、学校の向こうの山をバックにして、反対側のビルという木が、立ち並ぶ不毛な世界を見つめた。

「人殺しや犯罪者すら、弁護する世界など…くそだ」

西園寺は、手を仰ぎ見た。

「いつになれば、道は開けるのだ」

西園寺は、目がつぶれても構わないと、太陽を直視し、手を伸ばす。


「あの世界なら、すべてのクズを弾圧できる!」

西園寺は、拳を握りしめ、

「悪には死を!」


その叫びは、心の底から、ここにいる限り、途切れることなく、叫び続けていた。


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