天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「何やら…例の場所が、騒がしいようですが」

ギリシャにある防衛軍の地下――安定者の間で、クラークとジャスティンを除く、六人の安定者が集まっていた。

暗闇に、球状の椅子が飛びかい、六人は議論を続けていた。

「あの場所は、我々は入ることができぬ」

苦々しく、1人が言うと、

「なぜ、まだ入れぬのじゃ!ティアナが死んで、もう何年もたつのに」

「ティアナめ!いらぬ封印を」

1人が、椅子の手もたれを叩いた。

「しかし、あやつが後継者として、育てた二人の内…」 

「1人は、我らの手の内の者」

「あやつは、あの場所に入れるからこそ、安定者に加えてやっているだけ…。本来ならば、我らの仲間になど、なれぬわ」

「あのような汚れた体」

他の安定者が、椅子に座りながら、飛び回っている中、

たった1人だけ、空中に浮かびながら、まったく動かない…白い髭をたくわえた男。

全員、フードを被ってる為、顔は見えない。

「長老は、どう思っておるのだ?」

1人の言葉に、一斉に全員の注目が、白髭の長老に向く。

「…」

長老は、何も答えない。

「チッ」

1人が舌打ちすると、椅子を長老の前で止めて、

「あんたは、どう思ってるんだ?それに、魔王は!」

長老は、安定者のリーダー的存在であり…魔王とのパイプ役にもなっていた。

「きいてるんだろが」

あまりにも無反応な長老に、話しかけた安定者がキレた。

すると、長老は、少し顔を上げた。

すべては見えなかったが、フードから覗かれた瞳の輝きに、話しかけた安定者は震え上がり、思わず椅子を後ろに下げた。

「捨て置け」

低く、威嚇するような声は、人類最高の存在である安定者の動きを止めた。

「それが、魔王の言葉であり、私の考えでもある」

その答えに、部屋は静まりかえった。



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