天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「こうちゃん」

放課後。

帰宅途中の僕を、女の子が呼び止めた。

栗色の少し癖毛が、かわいい女の子。

沢村明菜。


僕は振り返ったまま、

走り寄ってくる明菜に、不覚にも見とれてしまった。

走ってきたから、少し息が荒い明菜は、

「今日は、部活がないんだ。一緒に帰ろうよ。たまにはね」

明菜と、帰るなんて。

昔は、何とも思わなかったけど…

今は…。

「今日は寒いね」

「あ、うん…」

隣を歩く明菜の横顔を、眺めてしまう。

去年より、綺麗になった。

心の中で、なごり雪が流れた。

幼なじみ。

2人の関係を、一言で言えば、そうなる。

単なる幼なじみだ…。

「こうちゃん」

だけど…今の思いは…。

幼なじみなんて、羨ましい…というやつもいるけど…

近すぎて…。

「こうちゃん!」

今、歩きながら…

2人の間にある…

この隙間を、埋めることなんて。

多分、できない。

一生縮まらない。

「こうちゃん!」

明菜はいきなり、僕の顔を両手で掴むと、

無理やり、自分の方に顔を向けさせた。

「え!?」

いきなり、距離が…。

僕が、ドキドキしていると、明菜は、さらに顔を近づけた。
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