天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「チッ」

舌打ちしたアルテミアの周りに、5人の蘭丸が現れる。

「分身?」

僕は、目を丸くした。

「生意気な」

アルテミアは、右手を突き上げ、雷鳴を部屋に落とし、

一気に、勝負をつけようとした。

「吹き飛べ!」

アルテミアの魔力が上がる。



「何事です!」

2人の戦いの音に気づいた見張りの武士が、慌てて障子を開けた。

武士は目を疑った。

5人の蘭丸に、おかしな格好をした…異人の女。

「え!」

武士は、両手で目をこすり…、もう一度、様子を確認した。

その瞬間、凄まじい雷鳴の輝きに、武士は目をやられた。



「どうした?」

武士の視界が戻った時、蘭丸は彼の肩を、叩いた。

「蘭丸様…え?」

もう部屋には、1人の蘭丸と、僕しかいなかった。

「あははは」

僕は必死に、愛想笑いを浮かべた。

「えええー!」

部屋を見回す武士に、蘭丸も笑いかけ、

「少し…長居をし過ぎたようだな」

まだ、部屋を確認している武士の横を通り、蘭丸は廊下に出た。

そして、改めて僕に向かって、頭を下げた。

「赤星殿。失礼致した」

蘭丸は、その場を去った。

僕は、蘭丸がいなくなっても、しばらく廊下を見据えていた。




< 415 / 1,566 >

この作品をシェア

pagetop