天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「お前が知りたいのは、ヴァンパイア・キラーの在処だろ」

両手を広げ、無防備な様子で、蘭丸はアルテミアに近付いていく。

「そうだ!本当は、お前なら、知ってるはずだ」

アルテミアは、強気な口調でありながら、体の震えが止まらない。

「知らぬと、昔言ったはずだが?」

「お前は、安定者だっただろ!」

「ああ」

蘭丸は微笑みながら、アルテミアを凝視し、

「ティアナと同じな」

その名前をきいて、アルテミアは言葉を失う。

「きいていないのか?自分の母親から」

蘭丸の言葉を、アルテミアは最後まで聞かなかった。

広間の壁を、雷撃で破壊すると、そのまま、エンジェル・モードに変わり、安土城から、飛び去っていった。

まるで、逃げるように。

「人に憧れる…女神か…」

雲も、太陽もない空を、飛んでいくアルテミアの後ろ姿を、悲しげに見送りながら、蘭丸は呟いた。

「!?」

いつのまにか、蘭丸の左隣に、信長が立っていた。

大きく開いた穴から、風が入ってきて、二人に吹き付けた。

「追いますか?」

蘭丸は、信長を見ずに、きいた。

「いや…今日は、捨て置け」

信長は、剣を鞘におさめた。

すると、壁はもとに戻り、城自体も安定を取り戻した。



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