天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
夕陽の時間は短い。


日が落ち、暗闇が訪れる前に、僕は寝床を確保しなければならない。

辺りを見回すと、全方は巨大な湖になっており、左右は、緩やかな高台で、背の短い草ぐらいしかなく、身を潜める場所はない。

振り返ると、森があり…人々が去っていたところでもあった。

(人が去ったということは…)

僕は、夕陽に背を向け、森に向けて歩きだした。

もしかしたら、町や村があるかもしれない。

異様に伸びる影とともに、森へと向かった。


夜が、じわじわと僕の体を包んでいく。

夜が近づくにつれ、僕の体が変わっていくような感覚がした。

夜…人は、暗闇を根源的に恐れているはずだ。

だけど、今の僕には恐怖はない。

一歩一歩、歩きながら、僕の心は高揚し、共にあった影は消えた。

(体が変わっていく)

はっきりと、自分にも変化がわかった。

ついさっきまで、僕の近くに、何匹かの魔物の気配を感じていた。距離はとっていたが、確実に獲物として、僕を狙っていたはずだ。

それが、今はいない。

(クククク…)

心が笑った。

僕は足を止めると、周りを詮索した。

離れていても、魔物の位置がわかった。

半径一キロに、百五十匹。

まったく隠れるとこのない草原のどこにいるのか…まったく見えない。

だけど、わかるのだ。

(それは、バンパイアとしてのあなたの能力…)

頭にティアナの声が響いたけど…関係ない。

本能が、僕を突き動かした。

「うおおお!」

狼のような咆哮を上げると、僕は拳を、地面に突き刺した。

すると、周囲に地震が起こり、亀裂が走ると…そこからマグマが吹き出した。

地面に潜っていた魔物達が、炙り出された。

僕は、魔物達に向かって、突進する。

唇の端から、牙を覗かせながら…。


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