天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「クラーク様」

ダブルベットの中で、くつろぐクラークのそばに、舞子が立っていた。

バスローブだけを身に纏い、そこからはみ出したうなじを、クラークに向けていた。


「何だ?」

クラークは、天井だけを見つめ、舞子の方は見ていなかった。

「赤星浩一を、どうなさるおつもりですか?」

舞子は、憂いを帯びた横顔をクラークに向けた。

「赤星浩一か…」

クラークは、天井に手を伸ばした。ブラックカードが、指先に現れた。

ブラックカードを見つめながら、

「なぜ…その名をきく?」

クラークは、少し強い口調できき返した。

「それは…」

口籠もった舞子は…下唇を少し噛むと、クラークの方に体を向けた。

「彼だけが、この世界で魔王と戦えるからです」

訴えかけるような舞子の視線に動じず、クラークは鼻だけで笑った。

「フン」

ブラックカードが示す…自らのレベルを確認した。

レベル89。

確実に、人の中ではトップクラスだろう。防衛軍に登録されている勇者の数は、500人。

レベル60以上を勇者とするなら…80以上の聖戦士は、20人もいない。

まして、レベル90になると…。

「魔物を、我々のいうレベルに換算すると…魔神クラスは、80以上。騎士団長で100。100以上は、神クラスといわれている」

クラークが指を振ると、ブラックカードは消えた。

「レベル100…」

舞子は、まだレベルの実感はない。

「先日までは、アルテミアで108だったが…今は、数段上がっているだろう。彼女の依り代だった赤星は…」

クラークは、虚空を睨みながら、

「予想では、110…。ただし、覚醒時には、どれほど上がるかは、未知数だ」


「魔王は……魔王のレベルは、どれくらいなのですか?」

舞子の素朴な問いに、クラークは初めて、舞子の方をちらりと見た。

そして、すぐに天井に視線を戻した。

「それは…わからない。多分…予想では…」

クラークは、唇を噛み締めた。

「200だ」



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