天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
(こいつは…)

リンネは、神流を観察しながら、その狂気に感嘆した。

リンネの髪が、もとのさらさらした黒髪に戻った。長い髪が、下へ流れる間に、

自由になった神流は、勢い良く飛び掛かった。

リンネの白い乳房に、神流は爪を突き立てた。

「あははっ!偉そうにしやがって!あたしを舐めるからだ!」

神流は、突き刺した爪をねじ込んでいく。

「あんたの名は?」

リンネは、爪で乳房をえぐられながら、神流にきいた。

「死ぬやつに、教える名前なんてない!」

楽しそうに、腕を回転させ、神流は嬉しそうに笑った。

「そうか…。だったら、なぜ安定者になった?」


「はあ〜?」

神流は、リンネに顔を近づけ、

「たくさん殺せるからに、決まってるだろ」

「そうか…」

リンネは、目をつぶり…やがて、にやりと笑った。

その笑みに、神流の全身に震えが走った。


「だったら…」

リンネは右手で、神流の右手を掴んだ。

「人間でいる必要は、ないわね」

神流の手は、リンネの胸から引き抜かれた。

不思議なことに、リンネの乳房には、傷一つついていない。

「それに…。あなたはもう…」

突然、リンネの両目がフラッシュし、神流の視界を奪った。

思わず後退った神流の体に、再び蛇になった髪から放たれた数万の火の玉が、一斉に放たれた。

「人間じゃないわ」


炎の波状攻撃に、さすがの神流も、その場で崩れ落ちた。

「なんて…丈夫な体…」

足元で横たわる神流。

意識を失っているが…体には怪我はない。


リンネは、しばらく神流の体から目を離さなかった。

(さっきのやつの暴走とは、違う…こいつは、人間と呼べるのか…)

その姿は人間よりも、確実に魔物に近かった。

「それに、このカードは…」

ブラックカード。一般の人間が持つカードと違い、無限にポイントを消費できる…つまり、無限の魔力を有するようになる…安定者専用カード。

しかし、それだけはないようだ。

先程の正志の変化時の…カードの変貌。

「魔王なら、何かご存知かもしれない」

リンネは、ブラックカードをかんざしのように、髪にはさんだ。
< 521 / 1,566 >

この作品をシェア

pagetop