天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
村から数キロ離れた森の窪みに、僕は着地した。

激しく息をしながら、三人を降ろすと、肩膝をついた。


血を吸ったとはいえ、まだ完全に、体力が回復していない。

メロメロいわく…僕の体は、完全にバンパイアには、なっていないそうだ。

人間としての機能を司る臓器類に、栄養を行き渡らせる為には、人間の食事が必要だ。

完全なるバンパイアになれば…血だけで十分なはずだ。

それを拒んでるのは、僕自身の心らしい。

「兄貴…」

予想以上に疲れている僕を見て、メロメロが近づいて来た。

「どうしてメロ!兄貴が本気になったら、あんな村…皆殺しにできたメロ!」

メロメロの叫びに、僕は息を整えながら、

「…相手は、人間だ…」

僕の言葉に、メロメロは目を丸くした。

「人間は殺せない…」

僕は立ち上がった。

「ど、どうしてメロ!魔物は殺して、どうして人間は、殺せないメロ!奴らは、兄貴を殺そうとしたメロ!おかしいメロ!」

メロメロの主張に、僕はフッと笑った。

「矛盾してるか…」

呟くように言うと、メロメロの顔を見た。

怒っているというより…悲しげだった。


この世界に来た時は、魔物は人を襲い、恐ろしい倒すべき存在でしかなかった。

アルテミアに守られ、戦い…続けた。

「赤星…。あたしは、魔王の娘だ…」

二人の女神と戦う寸前…死を覚悟したアルテミアの言葉…。

その時から、僕は矛盾していた。

その矛盾を正すことは、今の僕にはできない。


「メロメロ…ごめん…」

ただ謝るしかできなかった。

だけど…。


いきなり、目の前が真っ黒になり、森の影から…魔物が染み出てきた。

木々が倒れた。

「赤星浩一!魔王ライの命により、お前を抹殺する」

三人の魔神が、現れた。


「ヒィィィ!」

メロメロとティフィンは慌てて、僕の後ろに回った。

「だけど!」

僕は動いた。

「我が名は、炎の騎士団サク…」

魔神は最後まで、名乗れなかった。

口から上がスライドした。

「まだ…途中なのに…」

顔半分が切り取られ、鮮血を吹き上げた。


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