天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
激しい音を立てて、白一色の廊下を歩く男女の姿に、すれ違う者達は、慌てて足を止め、敬礼した。

男女は無言で、人々の敬礼の中を通り過ぎていく。


廊下の突き当たりにいる扉が開くと、

そこは、巨大な地球の立体映像が浮かぶ…司令室だった。

男女が入ってくると、その地球を囲むように並ぶ円状のテーブルに、座る隊員達が一斉に立ち上がり、敬礼する。

男女とは、クラークと舞子だった。

クラークは頷くと、座るように促した。

「状況はどうなっている」

クラークの言葉に、一番近くにいた隊員が、話しだす。

「現時点で、我々防衛軍に対する攻撃は、ございません。各地での魔物との戦いも、いつもの平均値を上回っては、おりません。ただ…」

少し口を詰まらせた隊員に、クラークは顔を向けた。

「ただ…何だ?」

「はっ!」

隊員は姿勢を正し、敬礼し、

「魔神クラスが数体!我らのテリトリー外の大陸に、上陸したと思われる反応が、ございました。ただ…何分にも結界が深く…正確な反応を、得ることはできませんが…」

最後は、少し口籠もる隊員の言葉に、クラークは考え込んだ。

先日、衛生軌道上の本部を破壊されてから、魔神クラスの動きが見られなかった。

「その地点は?」

「ロストアイライド付近です!」

「ロストアイライド…」

そこは、この世界に馴染めない者や、魔王に追放された者達が住む大陸だった。

まだ、妖精や聖霊が存在しており…カードシステムを使わなくても、人が魔力を使うことができた。

後に、魔王ライを倒した後…ロストアイライドを解放し、再び妖精や聖霊の力を借りる。その計画は、防衛軍の極秘事項に入っていた。

ライが死ねば、この世界を覆う妖精や聖霊を殺す気体も、消えるはずである。

しかし、ライを殺すすべと、

ロストアイライドに幽閉されている者の存在の為、防衛軍はその大陸に手を出すことはしなかった。

(ロストアイライドに、魔神?)

クラークは首を捻った。

(レイを殺す為とは、思えぬ…。魔神を送り込む理由は…)

それは、2つしかなかった。

(アルテミアか……赤星浩一だけだ)

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