天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
弱さと強さ
「何?ここは」

ブラックカードを使い、格納庫内部へテレポートしたはずの神流は、何もないただ暗黒の空間にいた。

広さも高さも…明かりもない。ただ…闇しか存在しない場所。

「どうなってるのよ!」

額に張りついたブラックカードをひっぺがえすと、もう一度テレポートしょうとしたが、エラーの表示が出た。

「くそ、くそ!」

ディスプレイを何度たたいても、反応がない。


「不用意に、テレポートなどするからだよ…新入り君」

神流の前に、螢のような明かりが灯り、目を凝らすと、人の形をとった。

「お、お前は!」

神流には、見覚えがあった。

鋭い爪を立て、襲いかかるが…男はひらりと、それを避けた。

「その姿…完全に、人を棄てたか…」

暗闇の中でも、サングラスをかけたロバートは、神流の姿を見て、呟いた。

六本の尻尾に、甲殻類を思わせる皮膚。それは、人間ではなかった。

まだ顔だけが、人の頃のままだったが…額には、ブラックカードの跡があった。

もう一度神流は、額につけると、表面が脈打った。

「まあ…自由か…」

ロバートはフッと笑った。

「てめえ!ここは一体!どこなんだ!」

鋭い爪を、ロバートに向け、威嚇するように言う神流に、ロバートは苦笑した。

「笑うな!」

苛つく神流に、肩をすくめ、

「ここは…格納庫と、外の間にある狭間の空間さ。不用意に、格納庫内に入れないように、虚空の世界とつながっている」

「虚空の世界…」

ロバートは頷き、

「万が一、ブラックカードを手に入れた者や…魔物が入れないようにな。格納庫内に入れるのは、ティアナに選ばれた者だけ」

ロバートはブラックカードを提示し、


「なぜ、先代の安定者が、ここに入らなかった…いや、入れなかったのか…」

ロバートの神流を見つめる視線に、神流は唾を飲み込んだ。

「それは…」

「それは?」



「この空間から、抜け出せなくなるからだ!」

ロバートは、にやりを笑った。

その笑みの冷たさに、神流はぞっとした。


「不用意に、飛び込んだ者は…永遠に、闇を彷徨う…」
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