天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
防衛軍総本部内にある安定者専用の部屋で、横たわっていた舞子は、ゆっくりと目を開いた。

「ここは…」

あまり眩しくない照明の光が、目に飛び込んできた。

「気が付いた?」

すぐそばから、声がした。

ゆっくりと体を起こすと、自分がベットの上にいることに、気付いた。

「あ、あたしは…」

記憶を手繰ると、魔神と戦っていたことしか…思い出さない。

「砂漠にいた…はず」



「俺が、ここまで運んだんだ」

声がした方を見ると、十畳程の部屋のドアの横にもたれた西園寺がいた。

「あ…」

舞子は、思わず声を出した。

そこに立つ西園寺は、今まで知っていた一個下の後輩ではなく、どこか落ち着いた雰囲気を醸し出す男の雰囲気があった。

本能的に、クラークに近いと感じたが……それは、舞子の甘さだった。

本当は、まだまだ危うい…少し成長仕立ての男の雰囲気だった。

そんな違いを、舞子がわかるはずもなく………ただ愛する男と同じ匂いを感じただけで、舞子は少し心を和ませていた。

「どうした?」

西園寺のほんの一言に、少し緊張してしまう。



「何でもないわ」

舞子は心を落ち着かそうと、少し口調を荒げ、部屋を見回した。

自分の部屋だった。

「すまない…本当は無断で、入るつもりはなかったんだが…」


「フゥ…」 

軽く深呼吸をすると、舞子はいつもの表情に戻り、きりっと西園寺の方を見た。

肝心のあの人がいない。



「クラークさんは?」

本当ならば、目覚めた時にそばにいるのは、クラークのはずだ。


西園寺は、言葉に詰まり…

「ああ…クラークさんは…」

言葉を選ぶように、ゆっくりと話しだした。

「出かけたよ」

「どこに?」

すぐに聞き返す舞子の視線が、痛い。

西園寺も、舞子を見つめ、

言うべきか言わないべきか悩んでいた。真実を。

「わかったわ」

舞子はベットから起き上がり、出ようとした。
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