天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
美人聡明。

その言葉を、体で表わしていた舞子は、同じ生徒会にいる美奈子とは、正反対の性格だった。

気さくで、男っぽい美奈子に比べて…能面といわれる舞子は、近寄りがたい存在だった。

成績も優秀であり…愛想以外は、完璧な女だったから………………………………………………………………この世界にいるには、完璧ではないと感じていた。


いつの頃か…よく夢を見るようになった。

それは、今いる世界ではなく、まったく違う世界を旅する…異世界の夢だった。

そこにいる自分は、何も背負っていない…身軽で、自由な自分だった。

今いる世界に不満があったのか……ときかれたら、

いいえと答えただろう。

だけど、何かの足かせを付けられて歩いているような感覚は、あった。

じゃあ、違う世界に行ったら、自由になれるのか。

自由とは、束縛の中にある。

束縛がない自由に、人は自由を感じるのだろうか。

すべてを自由にできるなら、他人なんていてはいけない。いるはずもない。


もし、他人がすべていうことをきいたとしても…それは、自由だろうか。

真の自由は、孤独だ。

人は、孤独の中で、一生を終えることができるのだろうか。

舞子は、自由を求めながらも、孤独を恐れていた。

能面のような表情で、他人を拒みながらも、孤独を恐れる自分は、矛盾だ。

何でもできる…といわれる自分は、実は何もできないんじゃないのか。

この世界のレールには乗っていた。

多分、一流の大学に入り…いい企業に就職し…

だけど、婚期は遅れる。

この世界に順応すればするほど…舞子は、この世界から離れていくような気がした。

自由とは何か……。




部屋を出て、廊下に佇んだ舞子は、ブラックカードを握り締め、

実感していた。

(今…あたしは自由だ)

ブラックカードを追跡モードにし、舞子はクラークの後を追う。

あの人の行く場所は、分かっていた。

赤星浩一のいるところ。

「だけど…この世界に必要なのは、あいつじゃないわ」


舞子は、テレポートする。

(この世界に、必要なのは…あなたよ…クラーク……)

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