天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「だけど…」

「それにさ…。メロメロは、殺された訳じゃない。赤星!あんたを守ったんだよ!」

ティフィンはそう言うと、赤星に背を向けて、

「そんないつまでも、グチグチ言ってたら、折角のあいつの勇気が、台無しだよ!」

泣き顔は、決して見せなかったけど…背中の震えが、ティフィンの思いを伝えていた。


「ティフィン…」

僕は、目の前の土の天井を見つめ、

「ありがとう…」

そう言うと、ゆっくりと右手を上げた。

まだ痛むが、何とか動く。

「歩けるようになったら、魔王の城を目指す!」

指を動かし、握り拳を作った。

「うん!」

ティフィンは、大きく頷いた。


「いつになったら、動けるようになる?」

ティフィンは、僕の方を向き、腫れぼったい目を隠すことなく、

「明日にも、動けると思う。…………だけど…」

途中で、言葉を詰まらせた。

「だけど?」


「だけど………魔力は使えない。指輪から出てる魔王の呪いが、全身のチャクラや魔力の発動能力を抑えているわ」

「指輪…」

僕は、右手についた指輪を見た。これはもともと、バンパイアに目醒めた僕の魔力を抑える為に、できたものだ。


「魔王の呪いを解くなんて…いくらあたしでも、無理だし」

僕は、指輪をまじまじと見つめ、

「指輪を破壊できたら…いいんだな?」

「え?で、でも…」

ティフィンは、戸惑った。



指輪がなくなった時、真のバンパイアの力は解放される。

しかし、それにより……人間としての意識を保つことが…僕が、僕でいられるかどうか…。

事実、指輪をつける前の僕は暴走し、アルテミアを殺しかけている。

アルテミアも言っていたが、


バンパイアになれば、人の血をすすらないと、生きていけない。

人を餌とする…完全に、人と違う者をなってしまう。

(しかし…)

僕は、自分の手を見つめ、


(今の僕では…何も守れない!力がほしい…)
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