天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「ううう…」

暖かな温もりの中、僕は目覚めた。

「気が付いた?」

目覚めたばかりのぼんやりとした視界の中に、小さな顔が、笑顔を僕に向けていた。

「ティフィン……?」

頭が目覚めてくると、僕は周りを見回した。

一面が土だ。

洞窟という程大きくはない。多分、熊か何かが掘った穴だろう。

もう宿主はいないようだ。

その洞穴に、枯葉や枯草に覆われた僕が、横たわっていた。

「人間って、ホント大変よね…」

ティフィンはため息をつくと、

「自分では、温度調節もできないんだから…」



「そうだ!僕は!」

メロメロのこと…フレアのこと…魔王レイのことを思い出した。

起き上がろうとして、腕を動かそうとしたが、

「クッ!」

あまりの痛さに、起き上がれない。

「まだ駄目よ!」

ティフィンは痛がる僕の手に、自分の両手を当てた。

暖かな光が、痛みを癒していく。

「全身の骨が、粉々になってたのを…何とか復元させたけど、まだ動ける状態じゃないわ」

また枯草のベットに、横になると、ティフィンは全身にくまなく、光を当てていく。

「ティフィン…君が、ここまで俺を運んで…治してくれたのか…」

ティフィンは頷き、

「大変だったのよ。メロメロを埋めて…あんたをここまで、1人で運んで…。たまたま近くに、この穴があったから、よかったけど…」

「メロメロ…」

僕は思い出し、涙が込み上げてきた。

「…仕方がないわよ。魔神に、魔王…って立て続けだったし…。それに…この世界は、あたしやメロメロのような力のない者は、いずれ死ぬ運命なんだから…」

ティフィンは、光を当て続け、

「あたしみたいな…下級妖精は…そう…他人に力を使えるけど、自分を守る力は、ないんだから…」


「俺が強かったら…」

目をつぶり、後悔の念にかられる僕を、ティフィンは軽く手で小突いた。

「ったく、あんたのせいじゃないし…あんたは十分強いわよ……。そうでなかったら、メロメロもあたしも、もっと前に死んでいたわ」

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