天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
明菜の周りは、輝き…その光は、奥へ道のように続いていた。

どうやら、砕け散った次元刀の欠片が、空間を切り裂き、道を作っているようだった。

その道の向こうに、僕と明菜の生まれた世界がある。


「早く行け!光が消える前に!」

僕は、光の向こうを指差した。

明菜は、大きく首を振り、僕の手を握った。

傷だらけで、血まみれの僕の全身を見、

「こうちゃんも!一緒に帰ろう」

涙ぐみながら、僕の手を握る明菜の優しさに、心が締め付けられたけど、



僕は、静かに首を横に振った。

「僕は…戻れない」

「どうして!」

明菜は、強く僕の手を握りしめた。

「………」


僕は、言葉がでなかった。

帰りたい思いはある。何も言わずに消えた僕を、家族は心配しているだろうし…学校のみんな…魔物がいない平和な世界…毎週買っていた雑誌…、テレビに、暖かな料理……

向こうの世界のすべてが愛しい。

(だけど……)



明菜から、顔を反らした僕の目線の先のに、横たわるティフィンがいた。


(そうだ…)

もうこの世界にも、大切な仲間がいる。

それに…。

瞳を閉じると、必ず浮かぶ人。


何よりも、愛しい人が…………この世界にはいる。


(アルテミア……)

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