天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「バグ?」

西園寺は、ブラックカードを見つめた。

「そうよ。完璧なシステムの中に、存在するバグ…。ブラックカードの暴走や、このカードを持つ者の末路を考えると…これも呪いよ…」

「それじゃ…まるで…俺も、呪われるみたいだな?」

西園寺は、カードをマリアの手から取り返した。

「あなたは違うわ。魔獣因子を完璧に抑えてる…でしょ?」

妖しいマリアの笑みに、少し苛立ちを覚えたが、西園寺は無視し、実験室内に目を移した。



姿が変わった…ジェシカがいた。


「現在…ブラックカードに準ずる新たなカードを開発中よ。それができたら、人は弱点の一つを克服できる」

マリアは煙草をふかし、

「圧倒的な肉体的な弱さ」

目を細めて、ジェシカを見た。



黒い結界は、ジェシカの全身を覆い、第二の皮膚になる。

有毒なる外気から、体を守るだけではなく、ちゃんと皮膚呼吸もできる。

あらゆる魔法を防ぎ、あらゆる環境に対応できる。


その姿は、黒き悪魔。


「ジェシカ。ブラックスーツの着心地はどう?」

マリアの言葉に、ジェシカは返事した。

「どうなってるんですか?」

マリアは、煙草を灰皿にねじ込むと、

「どうでもないわ。ただあなたは、魔神の力を手に入れたのよ」

「魔神…」

ジェシカは、自分の手のひらを見た。真っ黒なまがまがしい皮膚。


「今から、言う言葉を叫んで」

「はい」

ジェシカは、姿勢を正した。

マリアは一呼吸置くと、

「モード・チェンジ」

口元を笑みをたたえた。

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