天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
変な形で固まり、丸焼けになった蟹の化け物から漂う臭いを嗅いで、ティフィンは驚喜した。

「美味しそう!」


激しく息をして、まだ緊張がとれない僕に向かって、ティフィンは上空から降りて来て、一言言った。

「早く切ってよ」

顎で、ライトニングソードを示すと、ティフィンは目で促した。

「食べるのか?」

目を丸くした僕に、ティフィンは舌なめずりをしながら、頷いた。

「勿論!こいつは、ご馳走よ!この大陸のグルメマップに載ってるのよ」


「グルメマップ……あはは…」

そんなものがあるとは…引きつる僕に、ティフィンは腕を組んで、説明する。

「こいつは、狂暴で、硬い甲羅をしてるけど、倒せないことはないわ」


僕ははっとした。

「ま、まさか…こいつを食べたい為に…僕を…」

ティフィンは、我慢できなく、ライトニングソードで貫いた腹部分の隙間から、身を取出し、食べる。

「それもあるけど…こいつがレアなのは…棲んでる場所よ」

ティフィンは、僕の肩越しに、向こうを睨んだ。

「もう見えるはずよ。この湖を抜けたから…」

僕は、ティフィンの視線の先を振り返った。

湖の向こう岸にいた時は、ただの草原にしか見えなかったのに…。深い霧が、目の前を覆っていた。

「何も見えないけど…」

僕は目を凝らしたけど、霧の向こうは見えない。

「これは、水のスクリーンよ。一歩前に出たらいい」

僕は言われるまま、一歩前に出た。



「な!」

唐突に、目の前に広がる…ただの荒れ地。

岩しかない世界の向こうに、天まで積み上げたような石の建造物が、そびえ立っていた。

三途の川で、子供が積み上げているという…石の山に見えた。

ただ大きさは、比べものにならない。


「あれが…魔王レイの居城にして、牢獄よ」

ティフィンは、僕の肩に止まり、頭の上にもたれた。

「あれが…」

異様に漂う死臭がした。

生というものをまるで、感じない。

「かつて魔王ライは、この地で、レイと彼の配下の魔神を皆殺しにしたわ。だけど…不死であるレイだけは、幽閉された…。殺された魔神達は、ゾンビよりも腐り…今は、ただの悪霊になっている」

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