天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
水面に突き刺したライトニングソードから、電流が湖全体に走る。

僕は、足で水を踏まないように注意した。

今の僕は、普通の人間である。

水に触れて、感電したら、動けなくなる。

いや、下手したら自爆だ。

湖がスパークする。

水面が乱れ、激しく騒めくと、いきなり水しぶきが上がった。

その中から、飛び出してきたものは、湯で上がった巨大な蟹だった。

「蟹?蛸じゃなかったのか!?」

驚く僕に向かって蟹は、香ばしい臭いをさせながら、あろうことか…真っ直ぐに突進してくる。

「蟹は、横歩きだろが!」

僕は、ライトニングソードを突き出し、そのまま蟹に向かって、走る。

「固い!」

予想以上に、蟹の表面は固い。一番柔らかいと思われる腹の部分なのに。

突き刺さらないことに、苛立つ僕の死角から、巨大な鋭い爪が襲いかかる。

「赤星!」

上空からのティフィンの注意に、僕は咄嗟にライトニングソードから、トンファータイプに変えた。

2つの爪を、トンファーで受けとめた。

その瞬間、凄まじい力が僕の全身にかかった。

このままでは、押し潰される。

本能で、そう判断した僕は、トンファーを爪に引っ掛けたまま、後ろにジャンプした。

全長10メートルはある巨大な蟹は、泡を吹き出して、怒りを顕にする。

「チェンジ・ザ・ハート!」

トンファーは、凄まじい勢いで回転し、爪を破壊した………と思った瞬間、

爪は裂け、無数の触角に変わった。

そのまま、僕に向かって、針のように鋭くなり、飛んでくる。

「何と、でたらめな!」

僕は、前に飛び込んだ。

間一髪で、触角を避けると、蟹の懐に入る刹那、トンファーをライトニングソードに変えた。

「今度こそ!」

腰から上に、捻りを加え、ライトニングソードを回転させる。

「無突き!」

かつていた…ブラックサイエンスのサーシャから、教えて貰った技。

無突きに回転と、電流を加えた強化型だ。

突き刺さった腹から、ヒビが入り、電流が血管のように、蟹の全身に走る。


中身まで、湯で上がるのに、時間はかからなかった。
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