天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
西園寺の部屋から出たリンネは、すぐにテレポートした。

防衛軍本部から、遥か離れた岩場に現れると、肉眼では見えなくなった本部の方を向き、リンネは笑った。

「案外…単純だった」

大きく背伸びして、再びテレポートしょうとしたリンネの前に、腕を組んだサラがいた。

「どうして…あんたが…」

リンネは驚いた。

サラはじっと、リンネを見据え、一言だけ発した。

「どうして、最後にアルテミア様の名を、口にした?」


リンネはすぐにはこたえず、彼女もまた腕を組み、サラを睨んだ。

「あんたには、関係ないわ」

無視していこうとするリンネの前方が、スパークした。

リンネは下唇を噛み締め、振り返った。

「その方が、あの男も、動きやすいだろ」

「そうかな?世界のすべてを、支配したいと思っている男が…たかが女1人の為に、心が揺らぐとは、思えない」

サラの言葉に、リンネは肩をすくめ、

「あんたには、わからないわ。漠然としたモノより、今すぐに手に入れたいもの…。男なんて、結局は、女を求めるものなのよ」

「理解できぬ」

首を捻るサラに、リンネは言った。

「あんたには、わからない」

その言葉に、サラは食い付いた。

「まるで、自分はわかっているみたいに言うな。我々、魔神に、そんな感情はないはずだ」

「そうね…確かに…」

リンネの脳裏に、フレアが浮かんだ。

「下級の魔物なら、子供を生んだりすることはできる。だが、我々魔神は、魔王により、戦い、他の魔物を支配する為だけに作られた。故に、人の言う愛情の気持ちなど、生まれるはずがない」


「そうよ」

リンネは頷き、だが否定した。

「だけど…我々は、そんなものかしら…」

リンネはサラを見、

「まあ…あんたは、女の姿はしているけど…別に関係ないものね」

リンネはそう言うと、ひらひらと手を振りながら、その場からテレポートした。

サラはしばし、リンネの消えた空間を見つめていたが…やがて、

「女か…」

自分の手の平に残った傷痕を見つめながら、テレポートした。


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