天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
妙な笑い声が、ダラスの耳元でした。

(クスクス…)

ダラスは、群れの中へ切り込んでいく。

(クスクス……まだ気付かないの?それとも……お爺ちゃんになっちゃたから…耳が遠くなったのかしら?)


ダラスは、その声にはっとした。

「ま、まさか……」

ダラスの動きが止まった。

ゴブリン達が、四方から襲い掛かってくるが、

ダラスの周りに発生した竜巻が、ゴブリンを弾き返した。

ダラスは、目をつぶると、息を整え……ゆっくりと目を開けた。

人々の魔物の間を、精霊たちが飛んでいた。


「ダラス!気付いた?」

ダラスの肩に、アゲハ蝶のような精霊が乗っていた。

「ステラか……!!」

ダラスの瞳から、涙が溢れた。

遠い昔……まだカードシステムがなく、魔王ライが君臨する前、

世界には、精霊や妖精が溢れ……人々は、彼らの力を借りて、生活をしていたのだ。

「生きていたんだな…」

ダラスの言葉に、

「当たり前でしょ!あたしたちの寿命は…人間の比じゃないもの」

ステラは、ダラスに笑いかけた。

「隊長!これは、どうなっているんですか?」

近づいてきた先ほどの戦士の周りを、紋白蝶の精霊が飛び回っている。

「そうか…。お前達は知らなかったな!昔、カードなんてなかったとき…我々は、彼らの力を借りて、魔法を使っていたんだ」

ダラスは、若い戦士にまとわりつく精霊を見て、

「お前は、気に入られたようだな…。後で、契約したらいい」

「け、契約って…」

周りを飛ばれて、どうしたらいいのか…戸惑う戦士に、ダラスは見本を見せる為に、剣を突き出した。

「我…友との盟約により……風を纏し!凪ぎ払え!」

ダラスの剣先に、風が巻き付き…横凪ぎに払うと、風が刃を化し、ゴブリンを胴体から、切り裂いた。

「凄い……」

感心する戦士。

「どうやら……年寄りは、気付いたみたいだな…」

戦場に、魔法の攻撃が復活した。

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