天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
城の中……ライが座る玉座の後ろに、皮肉にも、十字架が立てられていた。

そこに、磔にされたのは……天空の女神…アルテミアである。

意識を失い、まるでキリスト……いや、魔女裁判にかけられた女のように、アルテミアは両手両足に、杭を打たれ、磔になっていた。

その前に座るライ。


(アルテミア……)

玉座から離れ、控えている西園寺は、アルテミアの無惨な姿に、心を痛めていたが、

それよりも、そんな姿になりながらも、美しいアルテミアにひかれていた。

(十字架に磔になったイエスを拝むやつらの気が知れなかったが……今ならわかる)

今すぐ近づき、アルテミアに触れたかったが………

娘を磔にし、平然と座っているライの不気味さに、西園寺はその場を動けずにいた。




「王よ」

ライの前に、サラが現れ、跪きながら、口を開いた。


「赤星浩一が、到着しました。彼に命じられた魔物達が、次々に戦いをやめております」




「そうか…」

ライは無表情に、そう呟いた。

「いかがいたしましょうか?」

ギラの問いに、ライはしばし答えず、

数分後口を開いた。

「あやつは…目覚めた。お前達のように、魔物を率いる者としてつくったのではなく、野にいる魔物は…魔王の力を持つあやつに、逆らうことはできない…」

ライはそう言うと、目をつぶり…瞑想を始めた。

ギラは、これ以上何も話さず……頭を下げると、その場から消えた。


(赤星が来たのか?やはり、生きていたか!フッ……それに、防衛軍はどうなった?)

西園寺は、城の中にいたがまったく…防衛軍に関する報告がない。

西園寺はブラックカードを取り出したが……何の反応もない。

苛立っていると、西園寺の目の前を、レイラが歩いてきた。

ライの向こうで磔になっているアルテミアを一瞬、見上げると、すぐに背を向けて、腕を組んだ。視線は、前を睨んでいる。

レイラも待っているのだ。

赤星浩一を。


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