天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
太陽とともに
「くそ!」

圧倒的に数で勝る魔物達と、何とか互角に戦っていたジェシカ達……ディグだったが…もう終焉を迎えようとしていた。

あらゆる魔法が使えなくなり……突然ディグシステムが、解除されたのだ。

生身をさらし、武器を失ったジェシカ達は、無力だった。

向日葵畑をただ逃げ回る。

向日葵に足を取られ、転倒した者達は、魔物の嘴にやられ、絶命した。


カードを発動しょうにも、エラーの表示しかでない。

「何があったんだ!」

小柄で、小回りのきくジェシカは、逃げることには、長けていた。


だけど、もう…死ぬ。

ジェシカはそう思った。覚悟とかでなく、絶望的な現実に、涙した。

カードを使えなくなったら、人間ってやつは……何て脆いんだろう。

服を来てなかったら、寒くって……暑い時は、裸になっても暑い。

岩を砕く力も、火を起こす力も…空を飛ぶこともできない。

人の弱さに絶望した時、ジェシカは躓いて、転んだ。


(終わった…)

何か……やっと死を受け入れた。

転ぶなんて、あり得なかった。

(ああ……)

涙より、ため息が出た。

食われるか……引き裂かれるか……。

目をつぶって、待っているけど……ジェシカを襲うものはいなかった。

(…………?)

覚悟は長くは続かない。死んでもいいなんて、瞬間だ。その瞬間で、人はすべてを諦める。



「逃げて……。いや、言葉が、悪いか……」

暖かい光りが、瞼の上からもわかった。

「何?」

驚いていると、暖かい光りはこう言った。

「生きる為に、走れ!諦めるな!」


その言葉に、ジェシカは目を開けた。

「人は、弱い!だけど、弱いからこそ……強くなれる。ほんの少しかもしれないけど……弱いと思ったら、それに負けなかったら、少しだけ強くなれる」


ジェシカの目の前に、少年が立っていた。

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