天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
流れていくニューヨークを、マリーはただ…見下ろしていた。


「あの子が気にしてるから…一応確かめたけど…やっぱり、家畜以下」

羽を広げ、飛び立とうとしたマリーの後ろに、誰かが立った。

マリーは振り返らず、ただ羽をたたんだ。

「カイオウか…。帰れと言ったはずだが…」

マリーは、少し苛ついている。

命令を無視されることが、マリーは一番嫌いだった。

「マリー様」

銀色に輝く…ざらついた鮫の表面のような鎧を纏い、顔半分を髭で覆われたカイオウは、

跪きながら顔を伏せ、口を開いた。

「恐れながら申し上げます。人間は、決して弱くはありません」

マリーは鼻で笑った。

「死ぬ前の最後の言葉が、それか…」

マリーは振り返った。

マリーの鋭い眼光が、カイオウの額を貫く。

「この国は、人間の国の中でも、最強の力を保持していたはずだ。それが、一瞬にして滅んだぞ」

マリーは、水に沈んだニューヨークを指差した。

「恐れながら…。この国は、力に溺れておりました。力に溺れるものは、力に滅ぼされます」

カイオウは、ここで殺されてもいいと覚悟していた。

「それは…」

マリーは、ゆっくりとカイオウに近づき、

「あたしのことを言ってるのか?」
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