天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
そのあまりにも優し過ぎる笑顔に、沙知絵は拍子抜け…どころか、目を奪われた。

目覚めてから、沙知絵はいろんな人間や、人でなくなった仲間と出会い、

ある程度の上辺の笑いを、見抜くことができた。

だけど、リンネの見せた笑みは、優しいだけでなく…どこか悲しみを、その裏に感じることができた。

それは、自分の中にもあるように、思えた。

だけど、今の沙知絵には理解できなかった。自分の心さえ。

沙知絵は、目覚める前の記憶がない。いや、ある一部分の記憶が、欠落しているのだ。

自分に戸惑う沙知絵の右腕を、リンネは見つめた後、ゆっくりと窓から離れた。

「あなたを呼んだのは、他でもないの」

リンネは、沙知絵の前に立った。

「あたしを、あなた方の末席に迎えてほしいの」



「え?」

予想もしてなかったリンネの言葉に、沙知絵は思わず聞き返した。

リンネは微笑みながら、

「この子達は、擬態してても、人とはまったく違うから、ばれると思うけど…あたしなら、完璧に人になれるわ」

リンネの微笑みに、見とれながらも、沙知絵は一歩後退った。

「も、目的は…何なの…」

「目的なんてないわ」

リンネの顔が、沙知絵の前で変わっていく。

切れ長の目が、くりっとした大きな瞳に変わる。顔の輪郭も変わる。

「あなたは今、孤立してるでしょ。それに、立場も危うい…」

リンネはクスッと笑い、

「何なら…ボディーガードでもやりましょうか?」

沙知絵は、右腕をぎゅっと握り締めると、また前に出た。

「あなたの目的は…何?あたしは、底を見せない者を信用できないわ」


「目的は…」

リンネは、さっきと違う顔で微笑み、

「あなたの…これからをそばで見たいの」


「な」

沙知絵は、絶句した。思いもよらない言葉だった。

「それだけよ。あなたが、気になる…。これが、理由じゃあ…駄目かしら?」

リンネの少し悪戯ぽい笑みに、沙知絵はなぜか、否定できなくなった。



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