天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
姉妹
美しさと強さ。

女に必要なのは、どっちらだろうか。

向日葵畑に囲まれた城のテラスから、何を見るわけでなく、フレアは外を眺めていた。

魔王ライの居城に入れるのは、7人の騎士団長と…101人の魔神だけである。

「何を見てるの?」

後ろから、声をかけられて、フレアはゆっくりと振り返った。

「お姉様」

テラスに入ってきたリンネに、フレアは微笑んだ。

リンネは、両手を組ながら近づき、フレアの横に並んだ。

思い詰めたような姉の表情に、フレアは前を向き、言葉を待った。

リンネは、吹き付ける風を浴びながら、しばし向日葵畑を眺めていた。


そして、おもむろに話しだした。

「…行くの?」

リンネの言葉に、フレアは力強く頷いた。

「はい」

決意の変わらない妹に、リンネはかける言葉を一瞬、見失った。

唇を噛み締めながら、言葉を思い出す。

「………あなたは、戦いには向いてないわ」

やっと出た言葉に、

「お姉様こそ…そうじゃない」

逆に返されたフレアの言葉に、リンネは息を飲んだ。


火の属性の魔物を統べる為に、生み出された最高位の魔神であるリンネに、

そんな言葉をかける者は、いない。

「お姉様は…優し過ぎるわ」

そんなことはない。


と否定したかったけど、無邪気に心から、そう思う妹の気持ちを、壊したくなかった。

「お姉様…」

フレアは満面の笑みを、リンネに向け、

「心配しないで」





その後、城を出たフレアは、魔王軍を裏切り、

赤星浩一の仲間となり、彼を庇って、死んだのだ。



「馬鹿な子…」

リンネは、今…フレアが愛した赤星浩一が、生まれた世界にいた。

それは、彼を殺す為なのか…それとも…。



リンネは自分の気持ちが、わからなかった。






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