天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「だから…」

男は、それを灰皿にねじ込むと、席を立ち、

その場で勢いよく、土下座した。

「俺を殺さないでくれ!」


だだっ広い無駄な空間に、無駄に快適な空間を自分達の為に作っている…公共機関の端にある応接間で、男は土下座をしていた。

それを見下ろす…一人の女。

「しかし…驚きましたよ」

応接間のドアを開け、側面にもたれる山根は、肩をすくめた。

「最初に、ここを襲いたいなんて…」


公共の役所に、転がる死体の数々。

空調の管理が行き届いた環境で、快適に…楽に仕事をするはずだった公務員達は、まさか…このような運命を辿るとは、想像もしていなかっただろう。

駅前のショッピングビルの七階にいる役所は、朝九時から受付を開始していた。

山根達は、まだ下の店舗が開く前の……役所だけの時間に襲撃していた。


全員黒服装に、サングラスをかけた見た目は、集団は異様であるけど、

山根達は役所のある階につくと、つっかい棒をエレベータに挟むと、

その階から、動かなくなった。


幸いなのか…一般市民は、まだこのフロアに来てはいなかった。


「一体…俺達が何をしたって言うんだ…」

男は土下座したまま、顔を上げると、

目の前に立つ女を見上げた。

女は、男の顔を見ることなく、ただフロアを見回し、

ぼそっと呟いた。

「笑った…」



「え?」

女の声が聞こえず、上半身を起き上がらせた男は、

一瞬で言葉を発することができなくなった。

女は、顔より上に、右足を上げると、

そのまま男の頭に振り落とした。

踵についた長い針のような突起物が、男の脳天から、顎の下まで、貫通した。

女が突起物を抜くと、男はその場で前のめりに、倒れた。

即死だった。




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