天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
失者
「どこ行ってたんだ?」

廃校になった学校の一室に、テレポートしてきたリンネを、

黒板にもたれた沙知絵が、軽く睨んだ。

リンネは苦笑すると、沙知絵の方に体を向け、

「神野真也のところよ」

ストレートに、名前を告げた。

「神野…真也…」

一瞬、沙知絵の眉が跳ね上がったけど…すぐにそっぽを向くと、

「知らないね」

少しつっけんどんにこたえた。

「知らないねえ〜かあ…」

リンネは、クスッと笑った。

本当に知らないなら…誰だ、そいつは……とか、きくはずである。


(いや…多分…。本人も無意識なのだろう)

リンネは興味深気に、沙知絵を見た。

忘れたのに、忘れていない。

人とは、どんなに不器用なのだろうか。


リンネは、軽く肩をすくめ、

「まあ…いいわ」

そう言うと、きちんと整列して並べられた机の一つに、腰掛けた。


「何がいいだ!あたしは、知らないと!」 

少し苛立つ沙知絵に、

リンネは話題を変えた。


「今の…やつらの動きは、わからないの?」


沙知絵は携帯を取出し、メールをチェックする。


「大量のメンテナンスを頼まれているから……」

彼らと少し疎遠になったとはいえ…沙知絵は、武器関係の専門家だった。

山根達…実行部隊の武器は、すべて沙知絵の考案したものだった。


「……このメンテナンスが、すんでからだと思う」

今までとは比べものにならない…生体兵器が、用意される。


「何をやるつもりかしら?」

リンネの質問に、沙知絵は携帯をしまうと、

「下らないことよ。人は、下らないことしかできないの」


(人……か)

化け物になってもまだ…人という単語を使う…沙知絵を、リンネはただじっと見つめた。

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