天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
久遠
「これは、始まりである」

山根の声が、発電所内に響き渡った。

「何も…悔いることも、恐れることはない。ここから、始まるのである」


山根は満足気に頷くと、スピーカーのスイッチを切った。

別に、集会のように集めることはしなかった。

何気なく始まり…何気なく終わっている…。

山根は、そんな気分にしたかったのだ。

「ここだけでなく…他も破壊したかったが…仕方ない」

山根は、放送室兼…警備室にいた。器材の前で、椅子にもたれながら、モニターに映る動力炉の稼働状況を見ていた。

「暴走には、どれくらい時間がかかる?」

そばに立つ千秋にきいた。

「十分程かと…」

千秋のこたえに、にやりと笑うと、山根は灰色の壁にかかった柱時計を見た。

11時半。

「12時ジャストに暴走させたい。11時50分に…作戦開始だ」

「はい」

千秋は頭を下げた。

「それと同時に…首都圏で暴動を起こす」

「暴動ですか?」

「有無。実行部隊と…欠陥品とでな」

山根は、さらに口元を緩めた。

「欠陥品ですか?」

訝しげに、山根を見た千秋に、笑いながらこたえた。

「病院のやつらだよ。我々のように進化できず…人から脱皮できなかった者達。やつらは、すぐ死ぬ!だから……死んで貰うのさ!街中で……人間でもない醜い姿を晒して!」

山根の言葉に、千秋は驚いた。

「そ、それでは…我々の存在が…」

「大丈夫だ!」

山根は舌を出し、

「我々の仲間に、テレビキャスターがいる…。そいつに、こうニュースを伝えて貰う」

山根は席を立ち、

「テロリストが、町に細菌をばらまき…そして、原子力発電所を破壊したとな!」

両手を広げ、天を仰いだ。

「各携帯サイトにも、書き込む!」

山根は楽しそうだった。



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