天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「部長!」

美奈子の立つ空間の色が、変わっていく。

いつもの…普段通い慣れた街並みに、戻る。

駆け寄ってくる明菜の姿を認めると、

いきなり、力が抜けた。

倒れそうになる美奈子を、慌てて明菜が支えた。

「すまない……」

美奈子は、緊張が解けたからか…普段以上の疲れに襲われていた。


「部長……。何があったんですか?」

明菜の言葉に、美奈子は自嘲気味に軽く笑うと、

「何もない……いや、何もできなかった…………」




「部長……」

明菜は、美奈子の瞳が涙で滲んでいることに気付いた。


倒れていた神野が、やっと立ち上がった。

地面に突き刺さった次元刀に手をかけ、引き抜いた。



「あたしは……この世界が好きだ…」

美奈子は、マスターの去った方を見つめながら、

「確かに……最高じゃないけど…」

ゆっくりと、美奈子を支えてくれている明菜に、顔を向け、

「お前達は、最高だ」

「え」

明菜は、突然の言葉に驚いてしまった。

「そんな存在がいるからこそ……人は、この世界で、生きていけるんだ」

美奈子は視線を、神野の右腕に向け、

何度も頷いた。

明菜は、美奈子の視線を追いながら、

美奈子の言葉の意味を考えていた。

何があったかは、わからないけど…

それが、この戦いの根本を示していることを、何となく理解していた。


だからこそ……明菜には、今の日々が切なかった。


悲しすぎると感じていた。





そんな時、明菜の携帯が鳴った。

始まりを告げる合図が、高らかに、三人の間に鳴り響いた。




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