ノラ猫

それでも、悪夢は夜の間だけだった。


朝になれば、にいさんは大学へと行く。
おじさんは相変わらず、家にいるんだかよく分からないほど姿を見せない。


もしかしたら、愛人の存在もいるかもしれない。
おばさんが家を出て行ったのも、そう言った理由があるのかも。


だけどもう、そんなこともどうでもよかった。



あれから何日が経ったんだろう……。
智紀はもう諦めてくれたかな。

それとも突然の突き放しに、苛立ちも感じてくれたかな。


もうあたしのことなんて、完全に忘れてほしい。
凛という女の子なんて、最初から存在していなかったと……。



「ただいま」


いつもよりずっと早い時間。
明るいうちから、にいさんが家に帰ってくるなんてめずらしくて、勝手に人の部屋に入ってきたその姿を、目線だけもっていった。

だけどその途端、ドクンと心臓が飛び跳ねる。


「すっげ!マジでこんな子、好きにしちゃっていいわけ?」
「超可愛いじゃん!」


にいさんの後ろに並ぶ、数人の男。

消え去ったと思っていた感情が、再び恐怖を感じ始める。


「いいよ。
 一人で犯しててもつまんねぇから」


その合図が最後。

気づけばあたしは、複数の男たちに囲まれていた。
 
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