ノラ猫
9章 鈴の音
俺にとって凛は、
カメラ以上に虜にさせる女がいると
教えてくれた驚きの存在だった。
フリーカメラマン。
それが俺の職業。
数年前まではパパラッチとして、いろんな芸能人などを追いかけ、邪険に扱われる日々だった。
事件などを激写して
雑誌に取り扱われては、撮られた本人からは非難される。
だけどこれが俺の仕事。
写真を撮ることが好きだったことから始めたけど、
どこかそれは、自分を満足させるものではなかった。
俺が撮りたいのはこんなことじゃない。
もっと自然の……人の魅力を引き出させる写真。
それに気づいてから、パパラッチを辞め、
一から写真の勉強を始めた。
最初は事務所を通して、アシスタントとしてのカメラマンをしていたけど
俺の写真が評判を呼び、すぐに実力カメラマンとして評価された。
もともと何かに縛られるのが好きじゃない俺は
事務所を辞めて、フリーカメラマンへ。
俺を気に入っていたモデルや、出版社からは、指名されることも多く、仕事に困ることはなかった。
カメラマンとしてモデルの写真を撮れば
帰りがけにそのモデルから声をかけられることもよくあった。
俺も男だし、
気に入った子がいれば相手にすることもある。
だけどそれは、
あくまでも体の関係のみの感情だった。