ノラ猫
 
ただの猫かと思った。

それか自転車の鍵についている鈴。

だけど絶えず聞こえてくる、鈴の音。


チリン……リン……。


自然と桜並木の中へと足を踏み入れて、鈴の音が聞こえる奥を見やったけど、猫がいる気配はない。

それでもなお、鈴の音は聞こえてきて……


「―――っ!?」


ようやく、その鈴の音が何を示すものなのか分かった。


どこかで聞いたことのある鈴の音。
この音を聞いたら、すぐに駆けつけると約束した鈴の音。


どこだ?
どこからだっ!?


桜の木々をかき分け、
必死に耳を凝らして奥へ進んでいく。


チリン……チリン……。


等間隔に何本も続く桜の木。
だけどそれが途絶えたとき、ひときわ大きな桜の木が現れた。


存在感ある桜の木。
まるでここの主のように……。


そしてその下に




「………凛っ…」




一人の少女が座っていた。
 
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