ノラ猫
 
「横川さんー。診察ですよ」

「あのっ……智紀が!!」

「え?横川さん?気づかれました!?」


ちょうど入ってきた担当の看護師さん。

彼女も驚いて、すぐに智紀のもとへ駆け寄った。


「分かりますか?今、先生を呼びますね」


そう言って、再び病室を出て行く。


「智紀……よかった……」
「……」


まだはっきりとしていない頭で、ぼーっとあたしを見つめる智紀。

声も発せない状況で
ゆらゆらと瞳だけが揺れている。


すぐに先生が入って来て、一度あたしは外で待っているよう言われた。


「凛ちゃん?」
「雄介さん」


病室の前でたたずんでいると、いつも仕事の合間に立ち寄ってくれる雄介さんがいた。


「どうしたの?こんなとこで」
「智紀が目を覚ましたんです!」
「え!マジ!?」


雄介さんも驚きの表情を見せて、そっと中を伺っていた。

ベッドごと上半身部分を起き上がらせ、先生の診察を受けている智紀。

目を覚ましてくれている。
意識がある。

それだけで充分だった。
 
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