ノラ猫
 
どんなに触れても……
どんなに胸が熱くなっても……


戻ってくることのない記憶。


彼女とどう出逢ったのかも
彼女がどんな過去を背負っているかも
彼女を……どれだけ愛していたかも……。


今の俺には分からない。


全ては記憶。
取り戻したい記憶。


………でもそれって、そんなに大事なこと……?


触れた彼女の温もりを感じて
確かに自分は、彼女を何度も抱きしめたことがあると体が覚えていた。


あの凍るような瞳も
見ているだけで胸が痛くなる。


もう一度……
笑ってほしいと心から願う。



なあ、過去の記憶ってそんなに大事なことなのかよ……。

 
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