ノラ猫
 
「ぁっ……」


広くなったベッド。
両手を広げてもありあまる大きさ。


あたしの名を呼んで、優しく体を撫でる。


全神経が変わってしまったかのように
智紀の指一本一本に反応して

どうしようもないほどの快感が自分を襲った。


それと同時に感じるのは


泣きたくなるほどの幸せ。


「どうして泣いてんの?」


勝手に流れ落ちた涙に、智紀は不安げにそれを指で拭った。

智紀を見上げて、心配させないように微笑む。


「幸せ、だから……。
 嬉しくて……勝手に涙が出てくるの」

「そっか」


嬉し涙だと知ると、智紀も微笑んで、瞼にそっとキスを落とした。


「今日は離してやれないかも」
「傷、は……?平気なの?」
「平気。凛から離れることのほうが無理」


わき腹にまかれた包帯。
もう傷口は塞がっているみたいだけど、先生には安静にしろと言われているはずだ。


そんなことさえも
今のあたしたちには関係なくなっていて……



「うん……。
 離さないで……」



強くぎゅっと、智紀に抱き着いた。
 
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