ノラ猫
「……」
目を覚ますと、部屋は闇に包まれていた。
何時なのかは分からない。
ただ、深夜だということは分かる。
ふと隣を見ると、そこにはさっきまで人を抱いた男が眠っていて……。
「……」
あたしはその男を見下ろすと、気づかれないようにそっとベッドから抜け出た。
二日間いたこの部屋。
妙に愛着がわいてしまった。
智紀という男にも、下手な期待までしてしまった。
だけど結局は、求めてきたものは同じで
所詮人は見返りを求めるもの。
(だからしばらくここにいろよ。
他の男なんか探すな)
そんな言葉なんか知らない。
一つの場所になんかとどまらない。
あたしにはさまよい歩く、ノラ猫の生き方が性に合ってんだから……。