うそつきは恋のはじまり
大切なのは

◇9.





「ふーんふふふーん」



一年の終わりまであと2日と迫った頃、12月30日。一年の仕事納めの日ということもあり、それぞれに仕事をする社内のフロアで、私は鼻歌混じりにパソコンのキーボードを打つ。

今日もいつもと変わらない事務仕事。だけど、こんなにも心が踊るのは胸いっぱいに彼方くんの笑顔がひろがるから。



「なによ七恵、随分幸せそうじゃない」



肩を組みながらからかうように言ってくる莉緒に、私は『ふふ』とまただらしない笑みを見せる。



「うん、しあわせー!超しあわせー!」

「昨日は『喧嘩したぁー』って死にそうな顔してたくせに。どうせすぐ仲直りしてきたんでしょ」

「うんっ」



先日、彼方くんと喧嘩をしてしまったものの無事仲直りをすることが出来た。

女性の前で彼が手を離したこと、『友達』と紹介されたことに変な疑いを持ってしまったりもして、『恥ずかしい』と言われてしまったことにへこんだりもしたけれど……。



『七恵のことが、大好き』



彼方くんのその一言だけで一気に幸せ!

塾の前であんな風に抱きついたりしちゃって、今度のバイトの時、他の人にからかわれてないといいけど……。


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