うそつきは恋のはじまり



「七恵が恥ずかしいんじゃないよ。もし傷つけてたら、ごめん」



この気持ち、全て伝わるように。缶を握る手を、ぎゅっと握って触れる。



「七恵のことが、大好き」



迷うなら、戸惑うなら、その度何度でも繰り返そう。伝えきれないほどの、愛を。言葉に表して。



「……うん、」



微笑み頷くと、七恵も俺の手をきゅっと握った。



「昨日からずっとね、彼方くんのこと考えて。そしたら会いたくなって会いにきちゃった」

「うん、すごい七恵らしい。俺もちょうど、この後七恵の家行こうって決めたところだった」

「そうなの?」



笑いながら、優しく触れる手。自分の手のなかにすっかりおさまってしまう手が熱くなるまで、ふたり話を続けた。



時々、すれ違うこともきっとある。好きだからこそ、上手くいかないときもある。

だけど、いつだって想っている。俺は彼女を、彼女は俺を。互いに想って、抱きしめる。

その心さえあれば、大丈夫。迷いやすい心をいつだって導くから。






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