重なり合う、ふたつの傷


「ちょ、ちょっと待ってよ」


「なんだよ」


「帰る場所ないんだ。親、ケンカしてるし。友達いないし」


「なら、俺んち来るか」


私はフライング気味に頷いていた。



夜なのに夕焼けを思わせるオレンジ色の街灯の下を天野くんと二人で歩く。


私は、天野くんのちょっと後ろを。その背中を見ながら。


「さっき、友達いないって言ったよな」


「うん」


「神田は?」


「……もう」


もう友達じゃないと言いかけると、天野くんがそれを遮るように言った。


「あのさ、神田に迷惑だってメールしたら、かっこいいと思って調子に乗ってんじゃないわよ、って逆ギレされたんだけど」


「えっ」


「A組に清水っているだろ。あいつ俺の友達なんだけど、神田に俺のメアドしつこく聞かれたから教えたんだってさ。そしたら、神田からメールが来っぱなし。ウザイって言葉好きじゃないけど、ウザイ」


「ウザイけど…。確かにウザイけどね、ルミにもいい所あるんだよ」


私は心からそう答えていた。

だって、中学の時、私に煌めくベールをくれたのはルミだから。




< 22 / 209 >

この作品をシェア

pagetop