重なり合う、ふたつの傷


《私ね今から死のうと思う。本気だよ》


すぐに返信がきた。


きっとルミは驚いてすぐに返信してくれたんだ。

その思いが空中分解した。


《なに言っちゃってんの。梨織ってさ、キスもした事ないでしょ。そんなんでシんだらつまらなすぎ。笑える》


私はケータイを水玉模様のトートバッグに入れて足元に置いた。


私に関心がある人なんて誰もいないんだ。


泣きながら、笑って、フェンスに足をかけた。



「もしかして死ぬつもり?」


男の声がして振り返ると、そこにはコンビニの袋を提げた天野くんがいた。


「天野くん!」


気持ちが大きくブレて揺らいだ。

一瞬にして死にたくなくなった。

生きていたいと思った。


だからそれを隠すように強調して言った。


「止めないで。本気なんだから」


「うん。別に止めないけど。でも、俺の姿が見えなくなってからにしてくれない。今死なれると気分悪いからさ」


天野くんはそう言うと立ち去ろうとした。

何事もなかったかのように冷静に。




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