重なり合う、ふたつの傷


窓から射し込んでくる夕陽がレモン色の照明と混ざり、私と天野くんの頬を染めている。


「お母さんの事、心配だな。でもお父さんとは仲直りできたんだろ」


「うん。仲直り、っていうか完全に私の勘違いだったんだけど」


「梨織は天然だもんな」


「違うよ、天然じゃないもん」


またふてくされてみた。頬をぷっと膨らませて。


「よしよし、もうわかったって」


天野くんが私の頭を撫でた。


二人で見つめ合うようにカプチーノを飲む。

時々、お互い恥ずかしくなって目を逸らして、また見つめ合って。

幸せのループ。


私はコーヒーが大好きでよくカフェに立ち寄っていたけど、ここのカフェは特別だと思った。


居心地の良さと、このカプチーノ。


かわいいだけじゃない。薫りも味も充実している。


きっとエスプレッソ自体がおいしくて、そこに注がれるスチームドミルクとフォームドミルクのバランスが絶妙なんだと思う。



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