重なり合う、ふたつの傷


こんな素敵なカフェが家の近くにあったなんて、嬉しい。

疲れが癒えていた。


「そういえばね、蒼太くんの部屋にあるのと同じ漫画、うちのお父さんも好きなんだ。私が男の子だったら一緒にキャッチボールしたかったみたい」


「いいよな、そういうの」


「うん。公園で男の子とお父さんがキャッチボールしてるの。それをベンチで優しく見守ってるようなお母さんになりたい。家族を幸せにできるお母さんになりたいな」


「なれるよ、梨織なら」


「そうかな……」


「なれるって。俺が言うんだから間違いない」


私は天野くんとそういう家庭を築きたいと思った。


天野くんもそう思っているのではないかと勝手にバラ色の未来予想図を描いていた。




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