不器用な初恋~俺は君のことが好きだ~
「先輩」
「り、涼君」
我知らず先輩を強く抱き締めて
「先輩、頼りないか知れないけど、もっと俺に頼って。悲しい気持ちや怒りの気持ちを自分1人で抱え込まないで。俺には何にも出来ないけど話しを聞くことは出来る。一緒に考え悩むことは出来る。泣きたい時は側にいる。だから俺を締め出さないで下さい。お願いします」
「涼君…ヒック…ヒック…」
収まっていた涙が再び溢れ出した。
「泣きたいだけ泣いて、もうアイツのことは忘れて下さい。先輩の為にも陽菜の為にも」
「…ひ、陽菜ちゃん」
「先輩がアイツをいつまでも引きずって自分を責め続けたら陽菜もアイツの陰を引きずることになる。だから陽菜の為にも…アイツは先輩とも陽菜とも俺達とももう無関係なんだから」
「……」
「そうでしょ?先輩」
「そ、それで…いいの?わ、私がアイツの本性を」
「前にも言いましたよね。17、8の俺達はまだ子どもだって。人の本質まで分かるわけはない。それにアイツは自分は『いい奴』を演じてきた。同じ学校でずっと一緒にいるならアイツの本性が垣間見えることもあるだろうけど先輩はそうじゃない。テニスをしている時の『いい奴』の部分しか知らなかったんだから。東高の監督達だって本当のアイツの姿を今日まで知らなかったんです。先輩が知らなくて当たり前です」
先輩の顔が歪み、また涙が。
「泣いて下さい。泣いてアイツのことは流して下さい」