じゃあなんでキスしたんですか?
家の扉は、ある意味でその人の心の扉だ。
心から気を許した人間にしか、開かれるべきじゃない。少なくとも、わたしはそう思っている。
でも、ここまで来たからには森崎さんをきちんと部屋の中まで送り届ける義務があるかもしれない。
しばらく胸の中で葛藤を繰り返し、わたしは結局、扉に鍵を差し込んだ。
玄関に入った瞬間、森崎さんのにおいに包まれる。
あまりに突然で悲鳴も出なかった。
後ろから回された長い腕に、息が止まる。
後ろで重い音を立てて扉が閉まり、視界が闇にとざされた。
「も、森崎さ」
声が震えた。
夏に蒸されたむき出しの腕が触れ合って、熱い。
もたれるようにわたしに抱きついたまま、彼は耳元に甘い声を吹きかける。
「……ねむい」
「こ……」
子どもかー!
のしかかられながら、わたしは手探りで壁のスイッチを探り当てた。
照明がまっすぐに伸びた廊下を映し出す。
左右にいくつかの扉があるのを瞬時に確認する。