好きになっちゃダメなのに。



「……生徒会室?」


速水くんに手を引かれるままについていくと、辿り着いたのは生徒会室だった。

私の問いに答えることなく、速水くんはガラッ、と音を立ててドアを開く。


初めて入った生徒会室は、思ったよりずっとすっきり片付いていて、驚いてしまった。

もっとごちゃごちゃしているのかと思っていたから。


部屋の真ん中に置かれた丸テーブル。

そのテーブルの前にはキャスター式のホワイトボードが置いてあって、何か書きこんである。

きっと、何かの打ち合わせの途中のもの。

部屋の中で圧倒的な存在感を見せるのは、窓際に置かれた背の低い本棚の中にずらりと並ぶ、分厚い本の数。

速水くんはもちろん、私の学年の生徒会執行部は成績優秀者揃いだけど、やっぱり他の学年もそれは変わらないんだね、きっと。


「晴山さん、いつまでも突っ立ってないで早く座って」

初めての場所に、思わずきょろきょろと周りを見渡していた私に、速水くんが呆れたように声をかけた。

ハッとすると、彼はもう丸テーブルの周りに置かれた椅子のうちのひとつに座っている。


相変わらず、愛想のかけらもない話し方だなぁ、なんて思いながら、速水くんの隣の椅子を引き、腰かけた。

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