好きになっちゃダメなのに。

「まぁ、そうだね。……ちゃんと全員そろって引き継ぎができて、よかった」

隣で安堵したように笑う速水くん。

私はその笑みにつられるように、「本当によかったね」と微笑んだ。


今日は新体制の一日目だけど、本格的な活動は明日から、ということで比較的早く帰ることができた。

選挙から1週間が経ったら、ほんのりしか感じられなかった冬の気配がすっかり本格的なものに変わっている。

もうすぐマフラーも必要かな。

あと、手袋も。

そんなことをぼんやりと考えていたら、ふいに速水くんが立ち止まった。

どうしたんだろ?と不思議に思いながら、私も立ち止まる。


「ちょっと時間ある?」


目が合った速水くんがそう言って、私はコクリと頷いた。

「じゃあ、……そこ」

そう言って速水くんが視線を投げたのは、帰り道の途中にある、小さな公園。

私は速水くんの後ろについていって、公園の中にあるベンチにふたりで腰かけた。

もう小さい子どもが遊ぶような時間ではないから、公園はがらんとしていて、誰もいなかった。

ベンチに座ってふと空を見上げると、真っ黒な冬の空に、いくつかの星が瞬いていた。

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