好きになっちゃダメなのに。

「晴山。これ、次2-6だから」

「え」

「え、じゃないだろ」

「はーい……」


先生は「よろしくな」と言い残し、教室を出ていった。


私はため息をついて教卓のところまで歩いていくと、先生が持って行くように指示したものを手に取る。

ずっしりとした重みに、思わず腕に力を入れ直した。


先生がいつも授業に持ってくる、なかなか立派な世界地図。


次に世界史の授業がある教室までこれを運ぶのは、いつもは日直の仕事なのに。


はあ。

ついてない。


「明李、寝てたわけじゃないよね?」


私の後ろからひょっこり顔を出したのは、羽依ちゃん。


「私、結構明李のこと呼んだよ?なのになんで気付かないの?なんであんなにぼーっとできるの?」

「私も知りたいよ。なんでこんなにぼーっとできるんだろう」


首を傾げて聞き返せば、羽依ちゃんは困った顔をして笑った。

< 4 / 307 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop