Love Game



「漣、寒いからマフラーした方がいいよ」

パリの冬も結構寒い。

「ん」

ブルゾンを羽織りマフラーを巻き眼鏡を掛けた。

サングラスではなく私が『似合う』っ て言った黒渕眼鏡を。

「ん?どうかした」

「えっ?あ、なんでもない」

いけない。

「見惚れていた?」

「な、なにを言ってんのよ。相変わらず自惚れやなんだから」

ズバリ言い当てられたから突っ慳貪に言い返してしまう。

「クククク…そのわりには赤くなってるし。ほんと。瑞希は可愛い。俺より年上なんて思えない」

「……」

褒められるんだか馬鹿にされてんだか。

「さ、行くわよ。お腹空いた」

「はいはい。あ、瑞希、寒くない?」

「あ、うん。大丈夫よ」

ダウンコートにロングブーツと毛糸の帽子と手袋もして完全防備している。

「ん」

クリスマスだから通りも賑やか。

日本人だと思われる人も多いけど誰も漣を見たりしない。

てか、気づいてない。

確かにこんな時季に『漣』がパリにいるなんて誰も思いはしな いだろう。

「な、俺が言ったとおり大丈夫だろ?」

耳元でこっそりと。

「うん」

「東京でもこんなもんだよ。こんな所を芸能人が歩いてるわけないって」

そうかも。

芸能人って数にしたら凄くたくさんいるけど、いくら原宿や新宿銀座を歩 いていても芸能人に会うことなんてないもんね。

会ってるのかは知れないけど気がつかない。

逆に普通の人の方が突飛な格好とかしてるからそっちに目がいく。

不思議なもんね。



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